【本】なぜデザインなのか。/原研哉 阿部雅世

原研哉、阿部雅世著「なぜデザインなのか。」の画像

なぜデザインなのか。(Dialogue in Design)(85点)

デザインには疎いので(実際はあらゆるものに疎い)、ドーンとデザインについて語りますよ的な本は読まないのだが、自分の見聞を広げるつもりで読んでみたところ、とっても好著だった。

「寝ても覚めてもデザイン」の原研哉と、ヨーロッパ在住17年の阿部雅世が、東京、ベルリンで語り通した全記録!
「本書の前半は東京、後半はベルリンでの対話になる。東京篇では僕がインタビューを受けるような形で始まり、ベルリン篇では逆に僕が阿部雅世に質問を投げかけるような格好で話が始まる。互いのバックグラウンドや、最近の興味などをそういうふうに伝え合いながら、徐々に話を交差させていった。読み返すと、お互いの話の分量が五分五分になるくらいのところに本書の味が出ているように感じられる。
僕らは『デザイン』という言葉を大事に生きてきた。今日、デザインという言葉が世界をおびただしく飛び交うけれど、それはなぜか。
対談集のタイトルともなったそういう大きな問いに背中を押されるように、対話は進んでいくのである。」

デザインとはなんぞや、どうあるべきか、なんていう難しい語りもあるにはあるし、多分、デザイナーの人には当たり前なのだろう固有名詞や形容がバンバンでてくる。

しかし、物作ったりアイデア考えたりという立ち位置にある人ならばスッと心に入ってくるようなフレーズもたくさんあって、頭の中にある正体不明のモヤモヤしたものが晴れていくような爽快感もある。

原:デザインという概念は、人間社会の中で、切実に運用されてきたものづくりの知恵を示しています。だからいわゆる「デザイン家電」なんて言葉が生まれる背景には、あまりに短絡的で消費主義的な発想が透けて見えてしまって悲しい。デザインという言葉を運用する意識のギャップが大きすぎて、どこから手をつけていいかわからない。人が生きて環境をなす、そこに蓄積された叡智がデザインです。デザインは人間にとって本質的な何かを覚醒させるための営みなのだということに、ぴしっと焦点を合わせて考えるか考えないかで、デザインのとらえ方はまったく違ってきます。

原:何が面白かったかというと、「ドローイング」ということの意味がわかった。要するに、頭の中にあるイメージを外に出す、感じたことを外に出すということを、抵抗なくスムーズにできるのがドローイングでありスケッチなんです。「自分がしでかしてしまうこと」に対して、平気になれること。クロッキーをやっていると、いちいち恥ずかしいなんて思っていられない。とにかく頭の中にあることや見たことを瞬間的に外に出してしまうことが大事なんです。

ここ、とっても胸にきた。

原:ドローイングというのは、イメージを頭の内と外で自在に融通させるトレーニング。これをやらないと、もうコンセプトもへったくれもないんです。

ポイントはドローイングじゃなくて、頭の中にあるものをいかに自由自在にアウトプットさせられるか。
これが最近の自分のテーマともバチンと重なっていて、今、この本のこの言葉に出会えたことは、とっても嬉しいことだった。

原:デッサンはものを見る、フォルムを見る目の訓練です。ちゃんと精密にものを見て、再現する技術はそこそこあるんだけど、それだけじゃアイディアをぱっと表出できない。心の内と外側の世界は、案外簡単には行き来できないんです。殻に閉じこもって、自分の内側にイメージというものをずーっと溜めている、それが普通の人です。

この本を読んでいるタイミングで同じようなことを糸井重里が違う言葉で語っている記事を見た。

アイデアだって、1000個考えている人がひとつのいいアイデアを出せるんです。10個や20個考えて、「私、いいアイデアがなかなか浮かばないんです」って、それはムリですよね。出す人は絶えず何か考えていますよ。それが、打席が多いことのすごみですよね。
ーやっぱり打席を多くして、アウトプットの分量を増やすことが、楽しく働くコツでしょうね。「どうすればいいかなあ」って毎日、机の前に座っているだけの人は、一瞬の楽しさも得られないですよ。
糸井重里「楽しいからこそ、仕事はできる」 | オリジナル | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

さっきも書いたが、今、自分の中のテーマというのが「アウトプットすること」なんだけど、それに呼応してと云ったら大胆に過ぎるが、でもそういうタイミングでこうした本や記事を見るということは、多分、実行するタイミングなんだろうな、と確信した。つか、10代とか20代に出会いたかった!
まぁ、意識したからそういう言葉に出会うんだろうとも思うが。

原研哉、阿部雅世著「なぜデザインなのか。」の画像

なぜデザインなのか。(Dialogue in Design)(85点)