恐怖の兜
ヴィクトル・ペレーヴィン
角川書店
気づくと見知らぬ部屋(迷宮)に閉じ込められた男女がチャットで脱出を試みる小説なのだが、これが実に不思議な一冊。
>>内容<<
ロシア文学界の異端児にして最大の人気者、ペレーヴィンの幻想が爆発する!
世界33ヶ国が参加する〈新・世界の神話〉プロジェクトに、いよいよロシアの大物が登場。
選ばれた神話は怪物ミノタウロスの迷宮脱出物語。
かつてなく幻想的で、未体験の想像世界に、目眩と感動が押し寄せる。
ミノタウロスの神話をモチーフにした作品で、神話では英雄テセウスが迷宮に入りミノタウロスを倒し、脱出不可能と云われた迷宮をアリアドネから貰った糸(スレッド)で脱出するという物語だった。
「恐怖の兜」でもアリアドネという登場人物がいるのだが、チャットがアリアドネのスレッドとなっている。
登場人物たちは何者かに検閲されているチャットを通して迷宮について、ミノタウロスについて真実を探ろうとする。
そのチャットの内容が登場人物各々のキャラクターを鮮やかに立ち上がらせていたりするのだが、時に支離滅裂な内容の会話が交わされたりと、大人数でチャットをしたことある人ならわかると思うが、空気が実にリアルなのである。もちろんリアルじゃない部分もあるが、総じてチャットの雰囲気が良く伝わっている。
その中には日本のアニメーションに対する解説といった本筋とは関係のない話もあるのだが、それがいちいち興味深いのも本書の楽しいところ。
最後には「ホォ~」という結末が待っているのだが、それは読んでのお楽しみ。
「アッ」と驚くではなく「ホォ~」なのでお間違いのないように。
恐怖の兜
ヴィクトル・ペレーヴィン
評価:
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