浅田次郎の作品は一部のピカレスク系とエッセイ等は除くと結構読んでいる。
本作「草原からの使者―沙高樓綺譚」は前作「沙高樓綺譚」に続く作品なのだが、系統としては「天切り松闇がたり」シリーズのようなもの。
「天切り松闇がたり」シリーズや「沙高樓綺譚」の天下一品の「語り」を読んだ人なら期待せずにはいられない。
ロンドンの超高級カジノの一夜は夢のように過ぎた―。大資産と才気、家柄、すべてを持った青年の驚愕の告白とは。総裁選の真実、大馬主が体験した運命の勝負、そしてアメリカ人退役軍人たちの「もう一つの戦い」。金と名誉を得た者だけが味わう甘美と戦慄を、浅田次郎が精緻に織り上げた傑作短編集。
収録されているのは以下の4編。
- 宰相の器
- 終身名誉会員
- 草原からの使者
- 星条旗よ永遠なれ
「終身名誉会員」はいかにもな展開だけれども、4編の中では一番読み応えがある、というか、この作品以外は浅田次郎の作品と考えると及第点にも満たない。
「宰相の器」は読み終えると「で? それがどうしたの?」だし、「草原からの使者」は思わせぶりなタイトルにしては、競馬薀蓄以外に感じるところがなく、「星条旗よ永遠なれ」にいたってはただのおっさんのエロ話に毛の生えた程度にしか思えず、残念な一冊。