リアリズムの宿-つげ義春「旅」作品集
つげ義春
双葉社
山下敦弘監督の映画「リアリズムの宿」がきっかけで購入。
タイトルの通り「旅」をテーマにした作品集だが、考えてみると「旅」をテーマに据えた漫画ってあんまり思いつかない。
長編ならまだしも、短編集になるほど色んな形で「旅」を描いてるというのは結構珍しいように思うのだがどうだろう。
井伏鱒ニの文学に影響され、しきりに旅行をしていた時期の短編集。
収録されているのは1967年~75年の作品「李さん一家」「紅い花」「西部田村事件」「長八の宿」「二岐渓谷」「オンドル小屋」「ほんやら洞のべんさん」「もっきり屋の少女」「蟹」「リアリズムの宿」「庶民御宿」。
つげ義春の作品だと不条理漫画の傑作「ねじ式」や「無能の人」しか知らないが、代表作とも云えるこれらの作品と比べると、「リアリズムの宿-つげ義春「旅」作品集」は、やや肩の力が抜けたユーモア漂う作風の短編が多い。
もちろん、つげ義春らしい不条理さやエロティシズムもあるのだが、清貧な「旅」の空気がそれに勝っていて、そこに独特な語り口があいまってちょっと不気味な話でもユーモアに転化されているように思う。
「旅」というのは多くの人を惹きつけてやまない間口の広いテーマなので、つげ義春への入口としてもオススメしたい作品。
リアリズムの宿-つげ義春「旅」作品集
つげ義春
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