いまだ島田虎之介の作品にハズレがないんだけれども、最新作「ダニー・ボーイ」はどうだろうと期待と不安が入り交じった感情で読み進めていく。
その結果、やっぱり傑作!
記憶に残るあの歌声が蘇るとき、人は振り返り過去を胸に抱く。
巡り会った人々の思い出が緩やかな風のように流れだし、ひとりの男の人生を語り出す…。
ストーリーテーラーのシマトラが、デビュー10周年を目前にして、種も仕掛けもなしに真っ向から勝負に出た傑作誕生!!
点と点のスケッチから紡ぎだされる壮大なドラマは、まさに島田虎之介の天賦の才を感じさせてくれる作品に仕上がっていて、これって何度も書いてるような気がするが、ポール・トーマス・アンダーソンの映画(特に「マグノリア」!)に通じるものがある。(と勝手に思っている)
主人公の伊藤幸男の歌声が、(まさに)この世に生まれてから出会った人々の記憶に残り、そのわずかな記憶からうっすらと、でも確かな輪郭で浮かび上がってくる展開は、島田虎之介ならでは。
この人のストーリーテラーっぷりには底がないのだろうか。
島田虎之介は超寡作な漫画家ではあるが、早くも次回作に大期待せずにおれない傑作。