島田虎之介は天才だと思う。
もうこれは「ラスト.ワルツ―Secret story tour」を読んだ時から変わらない。
「東京命日」を読んでも相変わらず天才だ。
漫画家が正式な肩書きだろうが、島田虎之介、通称シマトラは作家と呼びたい。
で、最新作「トロイメライ」を読んだ。
ジャカルタ、カメルーン、イラン・イラクの国境、そして東京、とそれぞれの場所から時空を越えて召喚されたそれぞれの人達のそれぞれの人生が、「ヴァルファールト」と名付けられた一台の傷ついたピアノの運命と共に奏でられる。
シマトラ得意の思わせぶりな間と時間の交差の連続の中で、自由自在に流れていく物語は、いつしかトロイメライに託された、ピアノが見続けてきた夢へと変調して行く…。
アフリカの神木から作られた百年前のピアノ「ヴァルファールト」を巡る幾つもの物語と人は時間も距離も越えて進む。
あれよあれよという間に島田虎之介の手のひらで遊ばれて物語は終着駅に向かう。
大風呂敷をドーンと広げて引きつける作風は相変わらずだけど、作を重ねるにつれてシンプルの度合いを増しているのは何故だろうか。シンプルになりながら語られる内容は薄まらない。濃くなるばかりだ。
とは云えまだ3作目。
代表作はまだない、と云っておこう。