ジョン・クラカワーの「空へ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか」は年に1冊の傑作級と云ってよいくらいのノンフィクションで、「エヴェレストより高い山―登山をめぐる12の話」も読みごたえのある佳作だった。
私の中ではジョン・クラカワーは山を描く作家だったが、本作はタイトルの通り舞台が「荒野」である。
厳寒のアラスカに消えたひとつの命。
アメリカの地方新聞が報じたある青年の死は、やがて全米に波紋を呼んだ。
恵まれた境遇で育った彼は、なぜアラスカの荒野でひとり死んでいったのか。
衝撃の全米ベストセラー。
裕福な家庭に育ちながら、アラスカの荒野に廃棄されたバスの中で餓死した24歳の青年クリストファー・マッカンドレス。
ジョン・クラカワーは雑誌「アウトサイド」に彼の記事を書く。
その記事を読んだ読者からマッカンドレスの行動に賛否の手紙がたくさん寄せられた。
彼はなぜ家を捨て放浪の旅の末に死んでしまったのか?
クラカワーは再びマッカンドレスの軌跡を追う。
雲をつかむような追跡行ではあるが、そこから少しずつ明らかにされる事実に自分が重なる人も多いのではないだろうか。
彼は、多くの人が一瞬であれども思い描いた人生に真正面から向き合った無名の若者である。
ちなみに本書はショーン・ペンの監督・脚本で「Into the Wild」というタイトルで映画化される。
Trailer:http://jp.youtube.com/watch?v=2LAuzT_x8Ek
2007年9月21日からアメリカで公開予定。