山下敦弘監督と云えばダメ男三部作だろ!
絶対「リンダ リンダ リンダ」ではないし、もちろん「くりいむレモン」も違う、という「ダメ男」愛な人にはタイトルからして見逃せないのが「その男狂棒に突き」である。
当然、見逃さないのである、というかDVD買ってしまった。さすがにレンタルに置いてなかった。
『リンダ リンダ リンダ』などで注目を浴びている若手監督・山下敦弘が描くドラマ。
AV男優(っても汁男優)であり刑事でもある尾崎を主人公にした”最も危険な刑事まつり”で上映された『汁刑事』と、そのロングバージョン『その男狂棒に突き』を同時収録。
いわゆるモキュメンタリー映画。
フィクションなんだけど、あたかも事実であるように、しかもドキュメンタリー・タッチで撮る作風がモキュメンタリー。
- 「ラトルズ/4人もアイドル!」世界一有名なフェイクなバンド、ラトルズのドキュメンタリー
- 「スパイナル・タップ」UK のヘヴィメタルバンドの US ツアーを追うモキュメンタリーの傑作
- 「スキージャンプ・ペア~Road to TORINO 2006~」CG作品”スキージャンプ・ペア”を実写も織り交ぜて映画化した(個人的には全く笑えない超駄作)
- 「みんなのうた」
- 「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」
代表的なモキュメンタリー映画で見たことあるのはこれくらい。
どれも良し悪しはあるにせよ映画史に残るような作品なのだが、「その男狂棒に突き」もその系列に連なるものなのかとなると、全然違う。
大雑把にドーンと区切ったジャンルが似てるだけで、フィクションじゃないが「ゆきゆきて、神軍」じゃなくて「神様の愛い奴」と比べたり並べたりするのが正しいような気がする作品(笑。――あくまで気がするだけで、奥崎謙三信者は怒り狂ったりしないように。
しかし、汁刑事・尾崎充こと山本剛史はある意味、奥崎謙三に通じるものがある。――信者は怒り狂ったりしないように。
AV男優ではあるが最下層レベルの汁男優にして本業は刑事の尾崎充がAV男優に挑戦、という設定は異常だが展開はいたってシンプル。
過剰なまでにAV男優としての自信とは裏腹に、いざクランクインすると尾崎充は有言不実行に走り、意味不明の理屈をこねくり回し、狂気の度合いを増してゆく。そんな狂気の終着駅は・・・
尾崎充のキャラがかなりテンパってるので、そこの具合が楽しめるか楽しめないかでこの作品の評価は二分されてしまうだろう。(きっと楽しめない残念な人7割だろう)
それくらいの凄味を感じる役者の尾崎充こと山本剛史だが、「ばかのハコ船」でもマイルドではあるが片鱗は十分に感じるので、汁刑事・尾崎充こと山本剛史にグッときた奇特な方はこちらもチェックされたし。