「ウエルカム・ドールハウス」「ハピネス」のトッド・ソロンズ監督最新作。
トッド・ソロンズと云えば「人間は生まれた時から不公平なんだよ原理主義」な作品で、オレ的に拍手喝采を送る監督である。
「ハピネス」のトッド・ソロンズ監督が、またしても米ニュージャージー州を舞台にアメリカ社会をブラックユーモアで斬るコメディ・ドラマ。
<フィクション>、<ノンフィクション>と名付けられた2つの物語からなる2部構成で、片や80年代のとある女子大生の、片や現代のユダヤ系一家の物語を過激な表現で描く。
物語は「フィクション」と「ノンフィクション」の二部構成。両者に関連はまったくない。
「フィクション」では脳性小児マヒの恋人マーカスがいる女子大生ヴァイが、ピューリッツァー賞を受賞している黒人教授スコットとナニしてしまう話。
こいつはなかなかキテる。
脳性小児マヒのマーカスは自意識過剰で被害妄想のカタマリで、黒人教授スコットは黒人の性豪伝説のまんま。
ステレオタイプな見方を悪い方向により誇張しているところなんか悪趣味丸だしなわけで、そこが面白い。
「それが事実であるかどうかは関係ない。
文章になった瞬間からフィクションになるのだ」というスコット教授の発言がこの物語のキモになるのかな。
ヴァイとスコットのナニのシーンは、アメリカではNC-17(18歳未満入場禁止)に引っかかるようで、そこでソロンズは巨大な鉄板を目隠しにして、過激なセリフだけを聞かせるという手法をとったようであるが、観たのは無修正版なんで、鉄板はなかった。
「ノンフィクション」は「フィクション」と比べると構成がやや複雑。
ドキュメンタリー作家志望のトビー(実際は靴屋の店員)が、現代の10代の若者をテーマにした作品を撮ろうと思い立つ。
その思い立つに至るまでの過程(ただ電話してるだけだが)が面白くて、トビーという人間のキャラクターを見事に描ききっている。
そのトビーが、とにかく有名人になりたいがな~んもやる気なしな高校生スクービーと出会う。
そっからスクービーの家族をも含めたドキュメンタリー映画を撮るわけだが、この一家に次から次へと災難が降りかかる。
まぁこれが笑えないんだ。
ガス室の因縁なんてブラックだし。
っつーことで、なかなか面白い作品であるが、「ウェルカム・ドールハウス」や「ハピネス」と比べると毒が減ってるようで、今までと違って対象が「人間」から「社会」に移っているように思う。
対象を「人間」から「社会」に移すと、糾弾ぽくなって「正義」の臭いがしてくるので毒が減ったように感じられてしまうのかな。