この本の企画者でもあり著者の一人でもあるニック・ホーンビィと云えば「ハイ・フィデリティ」「ぼくのプレミア・ライフ」「アバウト・ア・ボーイ」「ソングブック」「いい人になる方法」と出版する本は次々とベストセラーでこれまた次々と映画化されるイギリスきっての売れっ子作家。
12の短編のうちのたった1編しか収録されてなくても読んでみたいと思わせる作家、それが私にとってのニック・ホーンビィである。
世界が注目する人気作家たちが描く──12人の“私”が語る、珠玉のアンソロジー
ニック・ホーンヴィ『乳首のイエス様』……美術館で警備係をしている“おれ”
アーヴィン・ウェルシュ『カトリックの罪(好きなくせに)』……同性愛恐怖症の“おれ”
ヘレン・フィールディング『殺しても死なない女』……アルコール依存症気味の“わたし”
デイヴ・エガーズ『僕が川に投げこまれてから溺れるまで』……野良犬の“僕”
ゼイディー・スミス『いや、おれだけさ』……映画監督志望の姉を持つ“ぼく”
メリッサ・バンク『小さな奇跡が起こる場所』……10歳年下のB.Fとデートしてる“わたし”
ジャイルズ・スミス『最後のリクエスト』……刑務所の厨房で働いている“あたし”etc
世界が注目する奇才たち──12人の“私”が一人称で語る、珠玉のアンソロジー。
内容としては玉石混合で、残念ながら玉の方の分が悪い。
- 「乳首のイエス様」ニック・ホーンビィ
- 「逆風をついて」ジョン・オファレル
- 「小さな奇跡が起こる場所」メリッサ・バンク
上記3作が気に入ったが、特にクラブの用心棒が美術館の警備員に転職して「乳首のイエス様」を警備する表題作「乳首のイエス様」は設定も展開も面白い。ニック・ホーンビィは短編も上手かった。
パントマイマーの孤独を描いた「逆風をついて」のジョン・オファレルは、まだ日本では有名ではない作家のようだが、この作品は結構読ませる。今後に期待。(とか云いつつ名前忘れちゃうんだが)
全体的に気に入った作品は少なかったが、バラエティ豊かではあるので、この中から気に入った一編を見つけるのはきっとたやすいハズだ。
数百円でお気に入りの短編一編と出会える。それだけで十分じゃないだろうか?