映画の見方なんてのはコレと決まったものなんてなく、各人が好きなように観て好きに解釈すればよい、というのは至極まっとうな意見であるが、その映画が作られた背景やエピソードを理解すれば、本来、制作者が意図したものが立ち上がってくる。
『2001年宇宙の旅』にはナレーションの解説がついていた。
『地獄の黙示録』のシナリオはベトナム戦争を礼賛していた。
『時計じかけのオレンジ』も『タクシードライバー』も実話だった。
わからない映画がわかり始める、隠された事実の数々。
映画はもちろんのこと芸術というのは時代を映す鏡なわけで、なにも知らずに「時計じかけのオレンジ」を観れば、バイオレンスと狂気、本当の自由とは? を投げかける映画にしか思えないかもしれない。
それだけでも十分に価値のあるメッセージだとは思うが、その背景にある物を知れば、この映画は更にその深みを増す。
背景を知れば、「ロッキー」と「ロッキー2」を隔てる溝のあまりの深さにお口あんぐりである。
取りあげられている映画は下記の通り。
- 「2001年宇宙の旅」
- 「俺たちに明日はない」
- 「卒業」
- 「イージー・ライダー」
- 「猿の惑星」
- 「フレンチコネクション」
- 「ダーティハリー」
- 「時計じかけのオレンジ」
- 「地獄の黙示録」
- 「タクシードライバー」
- 「ロッキー」
- 「未知との遭遇」
他にもコメントされている映画はあるが、どの作品も一度は観たことあるだろう名作ばかり。
しかし「2001年宇宙の旅」「イージー・ライダー」「地獄の黙示録」「タクシードライバー」といったガチガチの定番名作も、実際のところこれのどこが名作なんだ? と思った人も少なくないはず。
かくいう私も「2001年宇宙の旅」特撮スゲー、「イージー・ライダー」チョッパーがカッコエエ~、「地獄の黙示録」ワルキューレの騎行とヘリのシーンがカッコエエ~、「タクシードライバー」小汚い変なオッサンの映画、とは思いつつも、素晴らしい名作であるという評価にはピンとこなかった。
まぁ、子供の頃に観ているのでしょうがない面もあるが、大人になって初めて観たとしても「名作!」と断言できるほど理解度が高まったか、となるとかなり心許ないというか、断言は無理なんじゃないだろうか(泣。
そこでこうした定番名作を名作であると理解できずに生涯を終えるのか、と思いきや、町山智浩氏から「映画の見方がわかる本」というステキな助け船がだされた。
「映画の見方がわかる本」では詳しく各作品の背景に言及しているが、実に簡潔にしてわかりやすい文章で、映画を観ずとも読むだけで「名作」を観た気分に浸れる。
しかし、浸っているだけではしょうがないので、今度、紹介されていた映画を再見してみようと思った。っつーか、観たくなった。
紹介されている映画が観たくなる。
つまり、「映画の見方がわかる本」は優れたサブテキストでありながら、優れた映画案内でもあるのだ。