権現の踊り子
町田康
講談社
町田康の著作を紹介するのはこのブログでは3冊目。
さながら町田康の大ファンみたいであるが、大ファンである。
大ファンなので町田康の本は他の作家と比べると短い間隔で読んでるが、文章から感じられる究極の堕落人間模様からは想像できないくらい多作の人で、読んでない本がどんどん増える。いったいどういうことなんだろう。
>>内容<<
権現市へ買い物に出かけたところ、うら寂しい祭りの主催者に見込まれ、「権現躑躅踊り」のリハーサルに立ち会う。踊りは拙劣。もはや恥辱。辟易する男の顛末を描いて川端康成文学賞を受賞した表題作や、理不尽な御老公が市中を混乱に陥れる、”水戸黄門”の町田バージョン「逆水戸」など、著者初の短編集。
「権現の踊り子」は下記6編からなる短編集。
- 鶴の壺
- 矢細君のストーン
- 工夫の減さん
- 権現の踊り子
- ふくみ笑い
- 逆水戸
どれも町田康のトーンではあるが、小説の舞台はバラエティに富んでいて、自身を100%投影したかのような長編とは違って町田濃度は薄め。
だからって飲みやすいわけじゃあないが。青汁はしょせん青汁なのである。
6編の中で一番気に入ったのは「工夫の減さん」。
なんでもかんでも工夫しなければ気の済まない減さんは、生活に様々な工夫を凝らすが、その工夫によってただでさえ楽じゃない生活が更に困窮する、という端から見れば懲りない人である。
減さんにとっては工夫することが目的で、生活を楽にするという結果はどこかに行ってしまっているのである。
減さんほど極端じゃないにせよ、こういう傾向の人って周りに居そうである。
そんな減さんを巡る下らないけどちょっといい話が「工夫の減さん」。「工夫して減する」タイトルもステキだと思う。
次は「逆水戸」。これは水戸光圀いわゆる水戸黄門が主人公の話。
町田康の水戸黄門で「逆」とまでついているくらいだからまともな話じゃない。悪代官も商人も理不尽なヤクザ者も登場せず、どんどん話がズレていき、黄門様は全然悪くない代官に首を刎ねられてしまう。ある意味、筒井康隆を思わせられる短編。
肝心の川端康成文学賞受賞作「権現の踊り子」は、ん~、よくわからん(笑。
それにしても町田康はアレコレと色んな文学賞を貰ってる。
芥川賞、谷崎潤一郎賞、萩原朔太郎賞、ドゥマゴ文学賞、野間文芸新人賞。立派なもんだ。
権現の踊り子
町田康
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