「京都には歴史的文化財が多く存在するから米軍は爆撃しなかった」というのが定説だそうで、実際、オレもそんな話を聞いたことがある。
京都・奈良・鎌倉など、貴重な文化財の残る古都が米軍の空襲を免れたのは、その価値を認めてくれたからだ、という「定説」は、まったくデタラメだった。
それどころか、京都は第三の原爆投下目標のひとつだったのである。
その証拠を丹念に洗い出し、この俗説が流布・信奉された理由を暴く。
京都で生まれ育ったせいなのか、米軍が京都の歴史的文化財を尊重して爆撃しなかったという話は、戦時の空爆の話とセットになってるかの如く聞いていた。
だが本書を読むと、実際には「歴史的文化財が保存されているから爆撃しなかった」わけじゃなく、例えば京都は原爆投下予定地域だったから(原爆の威力を正確に把握するために)爆撃は行われなかっただけであり、京都は古都だから爆撃しなかった、という説も米軍の占領政策の一環として広められた、ということが米軍の資料から明らかにされていく。
ということで、オレがどこかで聞いた定説の一つが隙もなく粉砕されているわけだが、「京都は特別」という日本人の意識がそうした定説の流布に一役買ったのかな、とも思う。