【本】テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0/ジョセフ・ジャフィ

テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0/ジョセフ・ジャフィ(翔泳社)テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0
ジョセフ・ジャフィ
翔泳社

以前、テレビCMについて、HDDレコーダーの普及でCMスキップが常態化し、喧伝されている効果との乖離が始まってんじゃないの? というごく当たり前の指摘があった。
ITmediaニュース:HDDレコーダーによるCMスキップで“損失”540億円

それに対して、「HDDレコーダーの録画番組でCMをスキップする率は7割に上ったが、リアルタイム視聴時間がそれほど減っていないため、CM価値は下がらない(と広告主側は判断している)」というわけのわからない反論もあった。
ITmediaニュース:HDDレコーダーのCMスキップでも「CM価値下がらない」

同記事には、「CMスキップの損害を回避するため、ドラマ内に商品を登場させるなどして宣伝する手法「プロダクトリプレースメント」が注目を浴びている。」とも記されているが、CM価値が下がらないならそんな宣伝方法が注目を浴びるわけもなく、だから“CMスキップの損害を回避するため”と書かれているのだろうと思うが、実に支離滅裂な話である。

で、「テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0」だ。

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実に扇情的である。

筆者ジョセフ・ジャフィは、「テレビCMは、質、信憑性、効果のどれをとっても最低だ。さらに最悪なのは、肝心の消費者が広告のなにもかもをまったく気にしていないことである。」と現在のテレビCMが置かれている状況を一刀両断してしまう。

確かに、個人的な感想で云ってしまうと、テレビCMの価値は目に見えるように落ちてきているようだ。以前と比べても共通の話題となるテレビCMは皆無に等しくなってきている。

「あのテレビCMにでてる人だよ!」

あるタレントのことを思いださせたい時によく使ったフレーズも、今や死に体に近い。

筆者は、今後の広告革命を担うのは、

・ブロードバンド
・ワイヤレス
・検索エンジン
・ネットワーク
これらが融合すると、過去に例を見ない爆発的な力が生まれる。

と指摘する。

上記が形となって現れたのが、高校教師のGeorge Mastersさんが5ヶ月かけて製作したiPodの60秒の自主制作CM)である。(ちょっと懐かしい。)

ワイヤレスは融合してないが、こうしたコンテンツこそテレビCMを凌駕する広告であると筆者は主張する。

消費者作成コンテンツこそ、広告業界の功績の最高峰だ。消費者参加型のインタラクティブメディアも、従来の広告から考えると大きな進歩だが、消費者が、自ら創造するブランドに関するコンテンツには勝てない。

消費者作成コンテンツに関しては、まだその萌芽にあると思うが、コンテンツ作成能力やインフラの充実を見ると、十分にその下地はできているので、そのうち消費者作成コンテンツが広告の一翼を担う可能性は高いだろう。

しかし、広告効果の高い消費者作成コンテンツを作るには、広告代理店(広告主)に大きな覚悟が必要とされる。もちろんその覚悟の先には「優れた広告効果」という果実も待っているのだが。

消費者作成コンテンツは、広告側が握っていたコントロールをある程度消費者に譲り渡すことにより、より消費者にとって意味があり、持続するブランドのイメージを与えることを可能にした。
コントロールを諦めることが、戦略の要である。コントロールを消費者に譲渡するということは、我々が真に消費者を理解し大切に思い、そして信頼している究極の証なのである。
(Visa社広告部長 Jon Raj氏)

さて、コントロールを諦められるのか?

そこが勝負なのかもしれません。

※この本自体は2006年広告関係諸氏必読の書だが、誤字が多すぎるのはちょっとどうかと思う。

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