映画、漫画、アニメ等を見ていると、時々「地獄の使者」と称する面妖な輩が登場する。
時には一般人が「アイツは地獄の使者だ!」と云いながらガクガクブルブルしている場合もある。
時には「地獄からの使者」と称する場合もあるが、「地獄の使者」と役割は同じようなもんだ。
とにかく「地獄の使者」はとっても怖い奴の肩書きとして普通に流通している。
が、思うに、「地獄の使者」は結局「使者」に過ぎない。
「使者」の意味は「命令や依頼を受けて使いをする人。使いの者」(大辞泉)である。
みんなが震えがっているのは単なる「使い」だ。
地獄の使者を、ヒーローが息も絶え絶えにギリギリのところで倒す。
周りの一般人は何もかも終わったかのように歓喜の声をあげる。
しかし、そこに倒れているのはただの「使いの者」に過ぎない。
そう、文字通り「地獄の使者」なのである。
地獄の使者「ワタシは地獄の使者だぁ〜」
ヒーロー 「なに!世界の平和を守るためにオマエを倒す!」
地獄の使者「いや、使者なんで、伝言を預かってるだけなんだけど」
ヒーロー 「オマエを倒さねば、世界の平和はない!」
地獄の使者「ちょっと待ちなさいよ。ワタシは伝言を預かってるだけで、とりあえず話を聞いてもらって
ヒーロー 「ドゥオオララアアア! ヒーロー・キーック!」
(ユウコちゃん、ボクのカッコイイ姿を見てる?)
地獄の使者「イタタタタタタタタ」
ヒーロー 「口ほどにもない。ヒーローが倒してくれよう!」
(ユウコちゃん、ボクのカッコイイ台詞を聞いたかい?)
地獄の使者「だから使者だって
ヒーロー 「ウラララララァァ! ヒーロー・タイフーン!」
(ユウコちゃん、ボクの今のカッコイイ回転を見た?)
地獄の使者「イタタタタタタタタタタタタタ」
ヒーロー 「さすがだな。タイフーンを食らってもまだ生きてるとは。さすがは最後にして最強の敵!」
(ユウコちゃん、世界の平和はすぐそこさ。そしたら・・・)
地獄の使者「最後とかそういうんじゃないから。ただの使い
ヒーロー 「ごちゃごちゃ言い訳するのはよせい! さぁ、最後だ! 必殺技ヒィーーーロォーーー・ビィイイイイイム!」
(ユウコちゃん、どう、このビーム。綺麗だろ。ああ、綺麗さ。でもユウコちゃんの綺麗さにはこのビームも連戦連敗さ)
地獄の使者「ウギャアアアア」
−地獄の使者爆発−
ヒーロー 「ギリギリの戦いだった。ビームが効かなければ世界はおしまいだった。しかしなんとかユウコ、じゃなくて世界を守った。オレは守ったどーーー!」
翌日。
使者が戻ってこない為に交渉の余地なしと判断した「地獄外務省地獄の使者部」の課長は、「地獄の使者部」部長に相談。
地獄の使者部部長は「地獄外務省」長官に報告し、長官は「地獄」大統領に決断を仰いだ。
「地獄」大統領は緊急議会を召集し、交渉の余地なしとして世界に宣戦布告。「地獄の軍団」が次々と世界へ赴いた。
3日後、世界は地獄となり、地獄は世界となった。
年月が経つと、その状態が普通となった。
そして今では「地獄の使者」は小説や映画、漫画やアニメの世界でしか使われなくなった。