Love
The Beatles/ザ・ビートルズ
2006
ジョージ・マーティン監修で息子のジャイルズがリミックスとリマスターを行っているのだが、The Beatles の楽曲をトラック毎に解体し、別の曲と組み合わせるなど、今だから可能となった技術を使って新しい The Beatles を提案している。
その時に可能な技術を使ってサウンドをよみがえらせたりリミックスを施していくという作業は、全く違うトラックが存在しバラエティに富んだ楽曲群を持つ The Beatles には今後も適用され続けるのだろうし、本作もそのひとつであろう。
最初に驚かされるのが2曲目の「ア・ハード・デイズ・ナイト」の超有名なイントロ(直前は「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のSE?)と「ゲット・バック」の組み合わせ。ドラム・パートとギターには「ジ・エンド」も入ってきてるし、The Beatles の初期と後期の楽曲がこうまで見事に組み合わされるところは感動的でもある。
冒頭からパンチ炸裂状態の「Love」であるが、次の「グラス・オニオン」への繋ぎも面白いし、「ハロー・グッド・バイ」と「ペニー・レイン」の一部が目立たないながらも入ってきている。
4曲目「エリナー・リグビー~ジュリア」は最後に「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のSE? がチラリ。
The Beatles で一番好きな曲と云ってもイイくらいの5曲目の「アイ・アム・ザ・ウォルラス」は目立った合体らしいものはなく、「ミスター・カイト」がチラホラ。また、少し音が加えられているのと、音がオリジナルよりもクリアになっていて、楽曲としての魅力が増しているよう。ショボイ音で聴いたら聴いたでサイケ感が濃くなってそれもまたイイので、正当派別バージョン的な楽しみかたができて嬉しい。
7曲目「ドライブ・マイ・カー~ザ・ワード~ホワット・ユー・アー・ドゥーイング」の「ドライブ・マイ・カー」に「タックスマン」のギター・ソロは雰囲気でてるなぁ~。リズムはそのままで「ホワット・ユー・アー・ドゥーイング」というのも楽しい。The Beatles の中ではそれほど有名曲ではないけど、この組み合わせは「Love」を代表する逸品だと思う。
9曲目「サムシング~ブルー・ジェイ・ウェイ」は両方ともジョージの楽曲だ(涙。
10曲目「ミスター・カイト~アイ・ウォント・ユー~ヘルター・スケルター」の「ミスター・カイト」は The Beatles の隠れ名曲であるが、シルク・ド・ソレイユのミュージカルに The Beatles が使われるとなるとこの曲は絶対に外せない。最後は3曲みつどもえ状態。
11曲目「ヘルプ」は全体的にクリアになってパンチが向上。特にベースが前進しているのがカッコイイ。
12曲目「ブラックバード~イエスタデイ」は「ブラックバード」のイントロから「イエスタデイ」という流れ。驚きはないけど、シックリしてる。
13曲目「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」はオリジナルテイクは使ってないのかな(CDの解説には途中からオリジナルと書いてあった)。ギターはオリジナルに近いが。曲の制作過程のような聴き心地だ。中盤以降は書くのが面倒なほどいろんな曲が曲が入ってる(笑。
14曲目「ウィズイン・ウィズアウト・ユー~トゥモロウ・ネバー・ノウズ」。「トゥモロウ・ネバー・ノウズ」と云えば The Beatles のミュージシャンとしてのクリエイティビティが最も発揮された曲のひとつだが、これが「ウィズイン・ウィズアウト・ユー」と組み合わさるなんて驚き。インドとサイケが合体。
15曲目「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド」の冒頭は後ろに「トゥモロウ・ネバー・ノウズ」が薄く入ってる。音がクリアになってアクセントが効いて実にイイ。後ろで鳴ってるギターの音がカッコイイな。
16曲目「オクトパス・ガーデン」は「グッド・ナイト」から入るリンゴ・スター・シリーズ?。最初はゆっくりめのテンポで途中から聴き慣れた「オクトパス・ガーデン」。「イエロー・サブマリン」のSEも聴こえてきて、まさにリンゴ・スターをフィーチャーした1曲。こうして聴くとリンゴ・スターの声って実に味がある。ヴォーカリストとしてもう少し評価されてもイイんでは?
17曲目「レディ・マドンナ」のイントロは「ホワイ・ドント・ウィー・ドゥ・イット・イン・ザ・ロード」のドラムで、中盤に「ヘイ・ブルドッグ」のイントロのギターが鳴る。ギター・ソロも流れているが、なんの曲だろ?
20曲目「レボリューション」はギターの音が格段に良くなって迫力満点。ギターの音が少し増えてるのは別テイクからだろうが、これもイイね。
22曲目ジョージの名曲「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」は「アンソロジー3」のバージョン(アコースティック)にオーケストラを加えたものだと思われるが、特にヴォーカルの音が良くなっている。エリック・クラプトンの有名なギター・ソロはない。
23曲目「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」は The Beatles 最高の名曲のひとつ。ポール・マッカートニーとジョン・レノンのまさに共作とも云える作品であるが、バックの音は別テイクも使っているようだ。
24曲目の「ヘイ・ジュード」はポールのベースがよく聴こえる。
最後の「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」はおそらく「シルク・ド・ソレイユ」のミュージカル「Love」でも最後を飾る曲なのだろう。ベースが最初から入っているのと、音が更にクリアになって「イエロー・サブマリン・ソングトラック」のリミックス&りマスター・バージョンよりも華やか。最後は「グッド・ナイト」のオーケストラと The Beatles のメンバーの会話が入り、なんとも粋な終わり。
というわけで既に何度も聴いているが、改めて聴きなおしながら各曲の雑感を書いてみた。
じっくり腰をすえて聴いてみると、The Beatles の新作としては受け止め難い気持ちはありながらも「ぜんぜんあり!」の作品だし、The Beatles の完全な新作はおろか新曲すらも期待できそうもない今となっては、リマスター盤は別として最善のアプローチをしている1作だと思った(ジャケットは最悪だと思うが)。
また、「The Beatles 1」やその他のベスト・アルバムでは取り上げられてない名曲をたくさん含んでいるなど、The Beatles への間口を広げる作品としても評価したいと思う。
ザ・ビートルズ「LOVE」収録曲
1.Because
2.Get Back
3.Glass Onion
4.Eleanor Rigby
Julia (Transition)
5.I Am The Walrus
6.I Want To Hold Your Hand
7.Drive My Car/The Word/What You’re Doing
8.Gnik Nus
9.Something
Blue Jay Way (Transition)
10.Being For The Benefit of Mr.Kite!/I Want You(She’s So Heavy)/Helter Skelter
11.Help!
12.Blackbird/Yesterday
13.Strawberry Fields Forever
14.Within You Without You/Tomorrow Never Knows
15.Lucy in the Sky With Diamonds
16.Octopus’s Garden
17.Lady Madonna
18.Here Comes The Sun
The Inner Light (Transition)
19.Come Together/Dear Prudence
Cry Baby Cry (Transition)
20.Revolution
21.Back In The U.S.S.R.
22.While My Guitar Gently Weeps
23.A Day In The Life
24.Hey Jude
25.Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band (Reprise)
26.All You Need Is Love
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・Love(通常盤)/The Beatles(2006)
・Love(スペシャルエディション)/The Beatles(2006)