ポピュラーサイエンスの時代-20世紀の暮らしと科学
原克
柏書房
20世紀に生まれたテクノロジーや日用品、施設の歴史って意外と身に覚えのあるものだ。
例えば、製氷皿(今ではアイスストッカーとも呼ばれてるようだ)にしても、今はプラスチック的なものが主流で、調べてみるとシリコン製のものもある。
身に覚えのある程度の昔でも、製氷皿と云えばアルミだかステンレスだか知らないが、金属製の受け皿に、上から見ると魚の骨状の金属製仕切り板がついていて、氷ができあがった頃を見計らって仕切り板のノブをガクガクブルブル揺らしながら持ち上げると四角い氷がハイ完成、というものであった。
この金属製製氷皿はいつの間にか生活から消えてしまい、今ではプラ的な製氷皿がお決まりの場所に座っている。
こうなったのもテクノロジーの進化のひとつであろう。
そうした生活に密着したテクノロジーの進化を取りあげたのが「ポピュラーサイエンスの時代-20世紀の暮らしと科学」である。
>>内容<<
電動歯ブラシ、体温計、トランジスタラジオ…。
誰もがお世話になった「新発明」で時代を読む。
20世紀に登場したテクノロジー、そこから生まれた日用品や都市型施設を扱った科学雑誌や新聞記事などの文化現象を取りあげ解説。
20個あまりのテクノロジーの進化が取りあげられているが、そのどれもこれもが現代人にとって無縁のものでなく、形や目的は変われども今も生き続けている物で、テクノロジーと文化現象の関係にも言及されている点が面白い。
例えば、米国で普及した電動歯ブラシは第二次世界大戦後に歯磨きの習慣が一般的になったところから始まる。まず、歯磨きの習慣は軍人の健康管理から始まり、そうした習慣を持った軍人が復員し、歯磨きが普及することとなる。
そうした習慣が普及するにつれ、当然のことながらより効果の高い(と思われる)歯ブラシへの需要が高まり、1930年代には既に登場していた電動歯ブラシが、30年の時を経て脚光を浴びるようになる。
他にも「そこまでするか?」というコンタクトレンズの恐怖の歴史(笑)や、現代からすると滑稽にすら見えるラジオに対する蓄音機メーカーの危機感は、MP3の普及に対するレコード会社のそれに似ているようにも見える。
空中広告(飛行機が空中で煙を吐いて文字や物を表示するアレ)が殺虫剤の空中散布へと変貌し、ベトナム戦争での枯葉剤散布へと受け継がれてゆく悪夢の歴史は核の歴史と重なる部分がある。
人類の歴史をテクノロジーと物との関係から見ていくという試みは面白いので、テクノロジーや物の歴史というキーワードに引っかかった人は読んでみてはどうだろうか?
*関連テーマLink*
・【本】自動販売機の文化史/鷲巣力