就職活動をするにあたって、怠ってはならないのがプリンタの確認である。
というのも、履歴書は手書きで書いたとしても、職務経歴書くらいはプリントアウトして楽したいわけだ。
そんないま杉並区で最も楽したい男が何ヶ月かぶりにプリンタの電源を入れてみると、インクカートリッジとおぼしき物体が、ギーコギーコガシャガシャガシャギーコと右に左にとめまぐるしく動きまくる。
「やー、もうウチに来て7年にもなるがあいかわらず働き者やねー、キミ。」
そんな微笑ましい情景が7畳ばかりの部屋で繰り広げられ、好景気と云いながら浮かれられるほどの実感を得られない厳しい現代に、突如出現したつかの間のホノボノムードを味わっていたのだが、いつまで経ってもギーコギーコガシャガシャガシャギーコがとまらない。
ロマンティックがとまらない、ならまだしも、ギーコギーコガシャガシャガシャギーコがとまらない、というのは困ったものである。
ロマンティックがとまらなくても職務経歴書はプリントアウトできるだろうが、ギーコギーコガシャガシャガシャギーコがとまらないと職務経歴書はプリントアウトできない。つまり、困るのだ。
「え~と、naru@unknownさんの職務経歴書を見せて頂けますか」
「ギーコギーコガシャガシャガシャギーコがとまらなくて持ってこられませんでした」
「えっ?」
「ギーコギーコガシャガシャガシャギーコがとまらなくて持ってこられませんでした」
「ギーコギーコなんとかってのはなんでしょうか?」
「ロマンティックよりもひどいものです」
絶対に落ちる。
オレはかしこいから面接を受けずともそんな結果はお見通しだ。
しかし、プリンタもギーコギーコガシャガシャガシャギーコに飽きたのか、5分ばかしギーコギーコガシャガシャガシャギーコと暴れまわったら静かになった。
ようやく職務経歴書をプリントアウトして楽できると思ったが、ベロベロベロベロとプリントアウトされてきた紙を見ると、謎の縦線が入っている。
粘着クリーナーの粘着テープが無くなりかけた時をお知らせする的なあの線のようなものが入っているのである。これは困る。
「え~と、naru@unknownさんの職務経歴書を見せて頂けますか・・・・・・この線はなんでしょうか?」
「粘着クリーナーの粘着テープが無くなりかけた時をお知らせする的な線です」
「えっ?」
「粘着クリーナーコロコロの粘着テープが無くなりかけた時をお知らせする的なあの線です」
「その線になにか意味でも?」
「お知らせしてるわけです。なくなりかけだぞ、と」
落ちた。完全に落ちた。
オレはかしこいから面接を受けずともそんな未来の結果はお見通しで、更に過去形にまでしてしまえる。
こいつは困った。
という経緯を経て、新しいプリンタを買った。
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・【プリンタ】Canon PIXUS(ピクサス)iP4300