「四割打者の絶滅と進化の逆説」というサブタイトルを見かけたときから探し回って見つからず、結局はネットで注文した1冊。
日本人選手の活躍で湧くメジャーリーグ。この華やかな世界に影を落とす一つの謎がある。 「なぜ4割打者は絶滅したか」だ。
この問題に世界屈指の古生物学者で野球ファンのグールド博士が取り組んだ。 そこから見えてきたのは、われわれの進化観にも潜む根深い偏見だった…生物界のトレンドを見出すには生物界の全容を視野に入れねばならない。 この「正論」を、アクロバティックな構成で語る、科学啓蒙家グールドの真骨頂。
で、目的の「四割打者の絶滅」については多くを割いておらず、進化論についてがメインであったが、タイヘン興味深く読めた。
四割打者が誕生しなくなった原因については自分なりに漠然とした考えがあったが、本書の「進化論」からのアプローチで見事に解明してくれたのは心強かった。
まぁ、肝心の進化論についての部分が正しければの話ではあるが(進化論にはグールド派とドーキンス派とがある)。
んで、その部分を素人なボクが説明するのもなんであるから、四割打者の絶滅に関して最も的確に要約されている部分を引用する。勘の良い人ならこれだけでなんとなく想像できるだろう。
優秀な選手が競争を行い、しかも一貫して同じルールの下で営まれてきた組織は、最適なやり方を少しずつ発見し、全ての要因が最上の方法を学んで身につけるのに伴って、変異を減少させてゆく。
選手(人間)の平均値は右壁に向かって移動し、そのせいで変異の広がる余地がどんどん狭まる。
4割打者はモノではなく、打率の変異全体の中の右裾である。
プレー全般が向上して変異が収縮する時、すばらしいプレーが増加する結果として4割打者は消滅する。
四割打者の絶滅についてはスポーツ番組や雑誌等でイロイロ書かれているが、全て説得力がない、というか厳しく云えばシロウトでもそれくらい考えつくわい、と感じていたが、この本で上手く説明されている。
もちろん、現実にはルールの変更であるとか道具の進化、その他の様々な要因によって四割打者の可能性は増減するのだろうが、人間の自然な肉体的要因からすると、四割打者が生まれる可能性は低くなっているとは云えるだろう。
しかし、上記の内容からすると野球人気が衰え野球人口が激減すれば、皮肉なことに四割打者の復活は夢ではなくなる、とも思えたりするのである。