最近はお笑い芸人の書く小説が流行っているらしい。
というわけで、最近のお笑い芸人小説人気の先駆けとなった劇団ひとりの「陰日向に咲く」を読んだ。
お笑い芸人・劇団ひとり、衝撃の小説デビュー!
「道草」「拝啓、僕のアイドル様」「ピンボケな私」ほか全5篇を収録。
落ちこぼれたちの哀しいまでの純真を、愛と笑いで包み込んだ珠玉の連作小説集。
お笑い芸人小説を特に意識していない私でも、
という小説がでているのは知っている。
「陰日向に咲く」を含めて3作とも2006年~2007年にかけて出版された小説であるが、「陰日向に咲く」は2006年8月時点で出版数が50万部を突破しており、「ドロップ」は7刷25万部突破とヒットしている。
文芸評論家の斉藤美奈子氏が雑誌の書評で「ふつうに直木賞を狙えるレベルでしょう」と記し、「陰日向に咲く」の帯には、
- ビギナーズラックにしてはうますぎる(恩田陸)
- こんなに笑えて胸が熱くなって、人間が恋しくなる小説に出会ったのは何年ぶりか(山田宗樹)
- お笑いブームなどはるかに飛び越えた才能(大槻ケンヂ)
という具合で、直木賞は獲れなかったが、2007年本屋大賞ノミネート作品10作品(大賞作品発表は4月5日)に入るなど、評判も上々。
で、読んでみたところ、普通の短編かと思っていたらそれぞれの物語の登場人物がどこかで重なるという連作小説だった。帯にもそう書いてあるが、完全に見逃してた。
内容はストーリーテラーとしての才能を感じさせるし、文章も簡素で読みやすく所々に独特な表現が散りばめられてて水準は軽くクリアしてる。
ただストーリーは今時のサラッとした感じで、書いてあることがすべてというような印象を持った。
文学というよりも脚本に近い印象で(映画化権の争奪戦が起きているらしい)、登場人物の感情も物語の背景も書いてあること以上のものは感じなかった。
サクサク読めるけど2度3度読んで新しい発見を期待できる、というような噛めば噛むほど味がでる作品というほどではない。だとしたら1,400円はちょっと高いかなと(笑。でも文庫なら十分元は取れると思う。
また、すべて一人称視点で書かれていたので、次は三人称の小説に期待したい。