個人的には船橋英雄、根本敬との「幻の名盤解放同盟」方面と、音楽評論家としての活動でよく目にするのだが、「私小説書きましたか!」と手に取ってみた。
根本敬氏も近頃はリリースを連発していたし、サブカルチャー界は2009年当たり年だったのでは?
少ない小遣いと相談しながら3枚に1枚は知らない人のアルバムを買っていたのが、自分の雑食癖の原点かもしれない−。
エロ本編集、音楽、そして、あの女との恋…。80年代を音楽と共に駆け抜けた自伝的音楽小説。
グズグズのドロドロ系を期待して読んだのだが、意外とのどごしの良い味わいの読み物になっていた。
後年の活動の下地が作られた時期だけあって、音楽にも仕事にもどこか面妖な屈折した性格を垣間見せる場面はあるが、「読む人を選ぶ」という作品ではない。
椎名誠「哀愁の町に霧が降るのだ」「新橋烏森口青春篇」「銀座のカラス」辺りがもう少し捻られたような感触を個人的には得たのだが、他の人はどうなんだろうか。
著者・湯浅学の評論や活動が好きな人は必読の1冊(音楽遍歴も書かれているし)だし、学生から社会人という過渡期の私小説が好物な人にもオススメしたい1冊。