【本】カムイ伝講義/田中優子

カムイ伝講義 田中優子カムイ伝講義
田中優子
小学館

民放には真似のできないTV番組、NHKの「週刊ブックレビュー」で紹介されていた1冊。

著者は法政大学社会学部の教授で、「江戸ゼミ」を主宰し、同ゼミと学科基礎科目の授業で「カムイ伝全集」を参考書に使う授業をやっている。あらステキ。

で、その授業の内容が本書に繋がっていくわけで、「カムイ伝」好きなオレとしてはきっちり読ませていただかなくてはなるまい。

>>内容<<
コミック界の巨星・白土三平のライフワークが江戸学の新視点を得て、新たな輝きを放つ!「いまの日本はカムイの時代とちっとも変わっていない」競争原理主義が生み出した新たな格差・差別構造を前に立ちすくむ日本人へ―。
江戸時代研究の第一人者が放つ、カムイ伝新解釈。

そもそも「カムイ伝」との出会いは、うちの親父の本棚に「カムイ伝」と「カムイ外伝」の単行本が突っ込まれていたのを、物心ついた頃のオレが手に取ってガビーン! から始まる。

子供の頃は、忍者してる「カムイ外伝」が好きだったが、それなりに年齢を重ねると「カムイ伝」の味わい深さが実にグッとくるようになった。

で、「カムイ伝」のすばらしさは、きちんと史料をあたった時代考証の確かさを忘れてはならない。
だからこそ、講義の参考書という用途に耐えられるわけなんだが、その辺は「忍者ハットリくん」や「NARUTO」とは違うわけである。(つかそもそもの走りだしが違う)

で、「カムイ伝講義」で描かれているのは、江戸庶民の豊かさやダイナミズム溢れる生活である。

正助たちが綿花を栽培したり新しい堰を考案したり、というのは、「カムイ伝」でも印象深いエピソードであるが、それは漫画だけで描かれた世界ではなく、江戸庶民の生活のリアルな姿でもあると著者は云うわけだ。

決して、武士に抑圧されまくった悲惨な人たちではないと。

それは感覚としては結構新鮮だったりする。
特に「カムイ伝」と結びつける切り口は間口を広げる新鮮さがある。

ただ、「カムイ伝」に紐づけて講義を繰り広げようとするあまり、話の持って行き方が強引なところもなくはない。

全然「カムイ伝」と繋がらないというか、かなり頑張って解釈しているところもあるので、そこはタイトルに足を引っ張られたような気もする。

カムイ伝講義 田中優子カムイ伝講義
田中優子
小学館
評価:stars
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