【本】勝つ工場―モノづくりの新日本モデル/後藤康浩

勝つ工場―モノづくりの新日本モデル/後藤康浩(日本経済新聞社)勝つ工場―モノづくりの新日本モデル
後藤康浩
日本経済新聞社

先日紹介した”強い工場―モノづくり日本の「現場力」”の著者によるその後的な一冊。

「開発と生産」「研究所と現場」の連携が日本の産業の武器となる。

日本で注目されている現場を徹底取材した傑作ルポ。


今、日本の工場では日本の製品は日本で作るという回帰現象が起きている。

例えば液晶のシャープやデジタルカメラのキヤノンは日本での生産に注力している。

どうして人件費の安い中国とかではなく日本で生産するのか?

例えば、デジタルカメラのように人手による組み立て工程が多い製品は、人件費の安い中国が生産にふさわしいように考えがちだが、実はデジタルカメラの生産コストに占める人件費の比率は平均的には1%以下に過ぎない。

原価が2万円のデジタルカメラなら人件費は200円以下。

生産コストの大部分は電子部品が占め、人件費の安さはコスト競争力の決定的な要因とはならないのである。

また、キヤノンが日本生産への回帰を進める大きな理由は、技術流出の阻止にある。

部品を現地メーカーに委託生産することはもちろん、重要な組み立て工程を海外におけば製品の歩留まり ((生産されたすべての製品に対する、不良品でない製品の割合。))を上げ、品質を向上させるノウハウが流出する。

流出したノウハウは中国や韓国の現地メーカーの技術力向上に寄与し、それによって日本の企業は苦戦を強いられてきた。

こうした過去を踏まえ、工場の日本回帰が今始まっているのである。

似たような事例はシャープの亀山工場でも見られる。

シャープの液晶テレビ「亀山工場モデル」の亀山工場とは、完全にブラックボックス化された技術流出に配慮した工場で、工場の核心部分はシャープの役員でさえ見ることができないという。

もちろん、すべて日本での生産にするのが望ましいわけではない。

日本での生産に向いている製品、人件費の安さを含めたコスト面で有利な海外生産に向いている製品、それを的確に見極めていくのが「勝つ工場」への道なのである。

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後藤康浩
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