【本】垂直の記憶-岩と雪の7章-/山野井泰史

垂直の記憶-岩と雪の7章-/山野井泰史

垂直の記憶-岩と雪の7章-(85点)

ソロでのアルパイン・クライミングでは世界的に有名な山野井泰史が、自身の登山人生を振り返る1冊。

2002年秋、山野井泰史は、ヒマラヤの難峰ギャチュン・カンに単独登頂後、下降中嵐につかまり、妻・妙子とともに決死の脱出を試みて奇跡的に生還した。この衝撃的な生還を機に、自らのクライミングの半生を振り返り、難ルートから挑んだ高峰への思いを綴る。
すさまじい登攀への思いと「日常」の生活も著わした、氏の再起への物語でもある。

人生で山に登りたいと思ったことが1度もないのだが登山の本は好きという、まさに「嫌よ嫌よも好きのうち」なテーマの本なんだけど、本書はなかなかの傑作。

全部で7章に分けてヒマラヤ、カラコルムでの挑戦について書かれているが、本書の読みどころはやはりヒマラヤのギャチュン・カン(7,952m)での奇跡的な生還だろう。

ヒマラヤのギャチュン・カン(Gyachung Kang)の画像

ヒマラヤのギャチュン・カン(Gyachung Kang)

ギャチュン・カンで、視力を失いながらも下山への工程を冷静に分析し、指を失うことも計算に入れ体力の限界を突破して生還する様は、まさに映画化不可能、映画化すると滑稽にうつるかもしれないほどのスリリングな展開。
また、書くことが本業ではないせいか、書かれている状況の過酷さに比べ、どこか達観したような朴訥とした筆致が、切迫した状況をよりリアルに伝えてくる。

「ゴルゴ13」137巻の「白竜昇り立つ」より

「ゴルゴ13」137巻「白竜昇り立つ」より ((この画像についてはこちらのページをご覧ください「ゴルゴ13 137巻 『白龍昇り立つ』の”アルパインスタイル”隊長に痺れる : 暫し山のような音」))

このギャチュン・カンからの奇跡の生還は沢木耕太郎著「凍 」に詳しく書かれているので併せて読んでおきたい(私は未読)。

垂直の記憶-岩と雪の7章-/山野井泰史

垂直の記憶-岩と雪の7章-(85点)