【本】人類進化の700万年/三井誠

人間とチンパンジーは同じ根っこから分かれた枝みたいな関係だけどいまのこの違いようはどうなのよ?

とテレビに登場する天才チンパンジーとやらを見ると思うのだが、なんでこうまで違ったのか現時点でわかっている「ヒトの起源」についてわかりやすく書かれた1冊。

4万~3万年前のヨーロッパ。ネアンデルタール人と現生人類のクロマニョン人が共存していたらしい。両者の交流を示唆する痕跡が、フランスなどに残されていた。
知能に勝るクロマニョン人が作った石器と同じくらい工夫を凝らした石器(石刃)が、ネアンデルタール人の3万数千年前の化石とともに見つかっている。
最新の研究で明らかになってきた私たちのルーツの新常識。

「最新の研究で明らかになってきた私たちのルーツの新常識。」を教えてくれる1冊ということで手に取ったが、本書のおかげで塗り替えられるこれまでの常識、というものをあんまり持ち合わせてなかったつまり忘却したので、無知かつ忘却癖甚だしい私には色んな点で驚きに満ちた本だった。

簡単に個人的に面白かった部分をウルトラザックリ引っ張ってくると、

私たちは、人類が進化してきたことに目を奪われてしまうが、チンパンジーの側からすれば、彼らだって人類との共通祖先から枝分かれしてから進化しているのだ。チンパンジーの進化が止まっているわけではない。

新常識というよりも至極ごもっともなんだが目から鱗な感覚。この一文を読んだ瞬間に「猿の惑星」が頭に浮かんだよ。

大事な遺伝子だが、ヒトゲノムの中で占めている部分は、わずか1~2%程度に過ぎない。(中略)ゲノムには、いらなくなったものをその都度、掃除してくれる便利な仕組みがないので、”役立たず”でもそのまま残ることになる。その結果、現在は働いていない部分がゲノムのほとんどを占める事態となっている。

遺伝子遺伝子とありがたがっているが(実際ありがたいのだが)、ほとんどの遺伝子はがらくたで処分されずに不法投棄状態なのである。しかも遺伝子の数は人間とハエはたいして変わらないんだとさ。

ゲノム研究が進んでも、「チンパンジーやゴリラにはなくて、人間だけにある全く新規の遺伝子というのはまだ見つかっていない」

新しい遺伝子が出現して人間になったわけではなく、チンパンジーやゴリラと共通の遺伝子の働き方に微修正が施されることによって人類は進化してきたようだ。つまりこの微修正がチンパンジーやゴリラに起きると「猿の惑星」になるのである。

この本のメインテーマとは異なる部分で驚愕状態となっているが、メインテーマに関しては色んなところでステキなレビューが書かれているし、Amazonに掲載されているの読者レビューも詳しいのでそちらをどうぞ。

著者が専門家ではなく生命科学、古生物学、環境問題などを担当してきた新聞記者であるということもあってか、一般向けに丁寧に解説された文章もわかりやすいし、オレ(人間)ってどこから来たのだろう? と思う人には格好の1冊としてオススメ。