天涯の砦
小川一水
早川書房
傑作中篇「ギャルナフカの迷宮」「漂った男」(「老ヴォールの惑星」収録)で私を激しく魅了した小川一水が、これ以上苛酷な環境はない宇宙でのサバイバルを描いたとなると読まずにはいられない。
>>内容<<
地球と月を中継する軌道ステーション“望天”で起こった破滅的な大事故。虚空へと吹き飛ばされた残骸と月往還船“わかたけ”からなる構造体は、真空に晒された無数の死体とともに漂流を開始する。
だが、隔離されたわずかな気密区画には数人の生存者がいた。
空気ダクトによる声だけの接触を通して生存への道を探る彼らであったが、やがて構造体は大気圏内への突入軌道にあることが判明する・・・。
真空という敵との絶望的な闘いの果てに、“天涯の砦”を待ち受けているものとは?期待の俊英が満を持して放つ極限の人間ドラマ。
手に汗握るサバイバル、であることは間違いない。
登場人物も多過ぎず、絵的に映える場面もそこかしこにあるから、このまんま映画化して欲しいくらいだ。
しかし、一冊の本として本当に面白かったか、となるとちょっと考えてしまう。
「ギャルナフカの迷宮」や「漂った男」のテイストを求めてしまっていたので、いかにもエンターテインメント的な展開な本書は、ちょっと食い足りないように感じた。
そう感じつつも、SF小説に馴染みのない人が読むとなると断然こっちのほうが面白いだろうし、読みやすい。
なんだかんだいって良質な作品であることは間違いないのである。
天涯の砦
小川一水
評価:
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