【本】告白/町田康

本。

告白/町田康(中央公論新社)告白
町田康
中央公論新社

まず最初に、この「告白」は町田康の最高傑作にして、日本文学史に残ると云っても過言ではない傑作である。

河内音頭で知られる明治時代の大量殺人事件「河内十人斬り」をモデルに、城戸熊太郎が犯行に至るまでの心のありようを町田康節で書き尽くしている。

>>内容<<
人はなぜ人を殺すのか――河内音頭のスタンダードナンバーで実際に起きた大量殺人事件<河内十人斬り>をモチーフに、永遠のテーマに迫る渾身の長編小説。殺人者の声なき声を聴け!
第41回谷崎潤一郎賞受賞作品。

「告白」は冒頭から読み手の心をグッとつかむ。

 安政四年、河内国石川郡赤阪村字水分の百姓城戸平次の長男として出生した熊太郎は気弱で鈍くさい子供であったが長ずるにつれて手のつけられぬ乱暴者となり、明治二十年、三十歳を過ぎる頃には、飲酒、賭博、婦女に身を持ち崩す、完全な無頼者と成り果てていた。
 父母の寵愛を一身に享けて育ちながらなんでそんなことになってしまったのか。
 あかんではないか。

「あかんではないか」

小説的に完全にアウトである。いきなり主観が出現する。あかんではないか。

もうこの時点で度肝を抜かれる。

そして城戸熊太郎はそこいらの百姓とは異なり非常に思弁的でありながら、その思弁を人に思うように伝えられないもどかしさに苦しみ、伝えようとして失敗し、ならば伝えようとすまいとして失敗し、ドツボにどんどんハマってゆく。

そして河内十人斬りへと至る過程は実に切ない、かと思いきや、町田節の面白さにより絶妙に中和され、その中和具合によりますます熊太郎の最後の悲しみはいつまでも心に響くのである。

泣かそう泣かそうとせずに泣かすというもの凄い技を町田康は会得してしまったのである。

とりあえず、死ぬまでに読んでおくべき一冊。

告白/町田康(中央公論新社)告白
町田康
評価:stars町田康文学の最高傑作。
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コメント

  1. 天竺堂通信 より:

    『告白』

     私は啖呵が切れない。苦手だ。
     誰かに感情を害されてムカっときた時、キツい言葉をカマしたい…とは思う。あふれる怒りを、相手に向け、思い切り吐き出し…